Logo東京大学 生産技術研究所 次世代モビリティ研究センター(ITSセンター)Advanced Mobility Research Center (ITS Center), Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

News Report 2010

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センター長交代

2010年4月1日より須田義大教授が先進モビリティ研究センター長に就任しました。 これは前年のセンター発足時からセンター長を務めていた桑原雅夫教授が東北大学大学院へ異動したことによるものです。 須田センター長は、センターの前身である「先進モビリティ連携研究センター(ITSセンター)」(池内克史センター長)での活動と桑原前センター長による活動精神を引き継ぎ、大学の本務である研究と教育を推進するとともに、社会への還元を精力的に進めていくことを掲げ、新たな職責を担うことになりました。

須田センター長は車両制御動力学を専門分野とし、自動車、ITS、鉄道、パーソナルモビリティビークル(PMV)、省エネ小型都市交通システム、工学的見地に基づく快適性評価をはじめ、幅広くかつ精力的に研究に取り組んでいます。

須田センター長は1987年に東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程を修了し、同年4月の法政大学着任後、法政大学助教授、カナダ・クイーンズ大学客員助教授、東京大学生産技術研究所助教授、同所教授を経て、2000年に東京大学国際・産学共同研究センターの教授に就任しました。 また2003年度から6年間にわたって進められた同センターの産学連携の共同研究プロジェクト「サスティナブルITSプロジェクト」を立ち上げたメンバーの一人であり、このプロジェクトの流れを汲む現センターの礎を築いた功績は偉大なものがあります。 2006年4月からは東京大学大学院情報学環教授を兼担し、2007年4月からは生産技術研究所千葉実験所長を兼務しています。 千葉実験所ではLRT(次世代路面電車)、PMV、省エネ小型都市交通システムをはじめとする次世代交通システムの実験・検証フィールドを構築しており、実験所長として千葉実験所を有効に活用した生産技術研究所全体での研究の展開に尽力しています。 また大学での研究活動のみならず、日本機械学会交通・物流部門の部門長をはじめ、自動車技術会理事、ITS Japan理事を務めるなど学会・団体での活動も積極的に行っているほか、省庁及び地方自治体の各種委員会の委員長等を歴任しており、多岐にわたり活躍しています。

一方、前センター長の桑原教授は東北大学大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻に着任しました。 交通工学が専門の桑原教授は、1985年に東京大学工学部土木工学科助手として着任し、2010年に同大学生産技術研究所教授として退職するまでの25年間、多くの優秀な人材の育成、数多くの研究成果の発表、様々な国家委員会への参加、国内・海外の学会活動など、学者として、また教育者として大きな功績を残しました。 また、前身の連携センターの設立メンバー、更に連携センターが東京大学の正式な研究センターに昇格した際の初代センター長を務め、センターの発展と日本におけるITSの展開に大きく貢献しました。 桑原教授の東北大学への異動により、東北地方における交通工学とITSの更なる展開が期待されます。 当面は東京大学生産技術研究所教授を兼任し、センターの中心的なメンバーとして引き続き活躍しています。

鈴木准教授が長崎県政策監着任、長崎EV&ITSの活動加速へ

2010年4月、長崎県にEVプロジェクト推進室が設置され、当センターの鈴木高宏准教授がEV&ITS推進担当政策監に着任しました(当センターにおいては、客員准教授として引き続き活動します)。

長崎県五島地域には、産官学連携の協議会「長崎EV&ITS(エビッツ)コンソーシアム」により、ITS車載器を搭載したEV(電気自動車)100台とPHV(プラグインハイブリッド車)2台と、急速充電器8箇所15基が導入されています。 7月にはこのEV・PHVを集結させたイベントを実施し、国内外へ広く情報発信を行うとともに、併せて地元の住民と関係者を交えた記念シンポジウムを開催し、EVのある島の未来について活発かつ有意義な議論を交わしました。 今秋9月にベルリンにて開催された日独環境フォーラムにおける紹介に続き、10月に開催されるITS世界会議(プサン大会)においても、スペシャルセッション、ブース展示、テクニカルツアーによって、世界へ向けて発信される予定です。

2010年度においては、さらにEV・PHV、充電設備の拡充を進めるとともに、ITSスポットの整備や統合観光情報プラットフォームの構築など、未来型ドライブ観光モデルの構築を進めるとともに、EVとITSによるエコアイランド構想の実現を、2013年のITS世界会議in東京に向けて加速していきます。

ITS基礎コース 開講

今年度4月から、東京大学大学院学際情報学府では「先進モビリティ基礎I」という新しい講義が始まりました。 本講義は、交通工学、車両・制御工学、情報・通信工学、ユーザー工学で構成され、通常は異なる専攻でしか学ぶことのできないこれらの領域の基礎を横断的に学ぶことで、学際的な視点とともに最先端のITSを理解するための能力を身につけることを目標として当センターの教員が担当するものです。 このような教育活動を通じ、センター設立目的の1つである人材育成に貢献しています。

首都高大橋JCTの高精細三次元モデルを構築

当センターでは、2010年3月に供用を開始した首都高速道路大橋ジャンクションの形状を計測し、三次元モデルを構築しました。 大橋ジャンクションはトンネルによる二重ループを主体とした複雑な構造物ですが、GPS等を一切用いることなく高精細なモデルが得られる点が特長です。 当センターの池内研究室では、これまでにも大規模文化遺産のデジタル保存などを目的として実物体の計測・三次元モデリング技術を培っており、今回もこの技術を応用しました。

供用開始前の3月16日には首都高速道路株式会社のご協力を得て、民間共同研究(東大ITSセンター、朝日航洋株式会社、アジア航測株式会社、株式会社トヨタマップマスター、株式会社デンソー)により開発したITS計測車両にレーザ計測機を積載して、坑内を5mmの精度(カタログ値)により計測しました。 その後、計測結果を精密な幾何形状分析より最適に繋ぎ合わせることで広大な三次元モデルを構築しています。 図のようなモデルが得られるまでに要した計測・処理時間はおよそ半日です。 今後は更に自動化を進めるほか、運転シミュレーションのシナリオ作成や、自動運転のためのマップ構築へ向けて活用を進めています。

また、当センターの坂本研究室と千葉工業大学の橘教授(東京大学名誉教授)らがセンター設立前の2003年から取り組んできたトンネル内の拡声放送システムも実用化の最終確認が行われ、非常時の案内放送が明瞭に聞こえる技術が導入されました。

柏ITS協議会推進協議会、第一回総会が開かれる

2010年2月に発足した「柏ITS推進協議会(会長:当センター池内克史教授)」の第一回総会が、千葉大学柏の葉キャンパス・シーズホールにおいて、7月1日に開催されました。 出席会員45名の同意を得て、下記6部会の活動を正式に始動しました。

  • 第1部会(部会長:牧野 浩志 准教授):次世代ICT(次世代DSRCサービス等)活用による利便性・安全性向上の研究開発・実用化
  • 第2部会(部会長:堀 洋一  教授):次世代車両の研究開発・実用化
  • 第3部会(部会長:大和 裕幸 教授):次世代公共交通システムの研究開発・実用化
  • 第4部会(部会長:須田 義大 教授):次世代モビリティの可能性の検討・検証
  • 第5部会(部会長:桑原 雅夫 教授):プローブ情報を核としたITS基盤情報システムの研究開発
  • 第6部会(部会長:池内 克史 教授):魅力あるまちづくり「柏の葉将来都市像」検討

国際展開に関する特別研究会

財団法人生産技術研究奨励会が主催する特別研究会には「ITSに関する研究懇談会」に代表される当センターの企画がいくつかありますが、そのうちの一つである「ITSの国際展開に関する特別研究会」が2010年度より新たにスタートしました。

ITSの国際展開に関する特別研究会は「日本の最先端ITS技術を世界の交通・都市・環境問題解決のためにどのように使えるのか、その展開の方向について議論する場」として企画され、当センターの牧野浩志准教授、上條俊介准教授、中野公彦准教授、田中伸治講師、平沢隆之助教が代表幹事を務めています。

去る5月14日に行われた第一回目の研究会では、慶應義塾大学名誉教授の川嶋弘尚氏と国土交通省道路局ITS推進室長の大庭孝之氏が講演し、その後に設けられた「ITS国際展開の現状と課題について」と題した意見交換の場では参加者と講師からの意見が多く聞かれました。 当日は多くの参加者で活況を呈し、日本のITSの現状及び将来動向や諸外国の都市・交通問題を解決するための日本のITSの活用について関心の高いことがうかがえます。

ITSの国際展開に関する特別研究会は年6回程度の研究会を開催予定です。

生研公開

東京大学生産技術研究所は6月3日~5日の3日間、オープンキャンパス(生研公開)を開催しました。 生研公開は本所の高い研究成果や活発な活動内容を所外の方々に公開・広報し、特に民間企業には新たなビジネスチャンスに結びつける機会の提供を通じて社会に貢献する重要な年次行事です。 今年度は実写映像と自動車のカットボディを組み合わせた新しいドライビングシミュレータを初めて公開しました。 マスコミや招待者のみを対象とする初日の内覧会では警察庁、総務省等が当センターを訪問し、設立目的および研究内容について理解を深め、センターメンバーと議論を行う貴重な機会となりました。

公開題目一覧

  • 共通: サスティナブルITSの展開
  • 須田研: 車両のダイナミクスと制御
  • 池内研: ITSのための都市空間センシングと提示 ほか
  • 桑原・田中研: 快適な道路交通社会の実現に向けて ほか
  • 中野研: モビリティの制御と信号処理
  • 橋本研: 空間知能化とロボティクス
  • 坂本研: 音場の計測と制御

17th ITS World Congress in Busan

2010年10月25日から29日まで、第17回ITS世界会議が韓国・釜山のBEXCOにて開催されました。 ITS世界会議は世界各国のITSに関わる大学・企業の研究者・技術者が一堂に会し、最新の研究成果の発表や施策に関する議論を行うと共に最先端技術を展示する場とし て、毎年秋に開催されています。

当センターからは、Scientific Session 3件、Technical Session 4件、Interactive Session 2件の講演発表を行いました。 また、池内教授がプログラム委員会の共同議長を務めたほか、Special Session "Energy ITS" では桑原兼任教授が、"GOTO EV & ITS Island Driving Tours of the Future" では鈴木客員准教授が司会を務める、などの貢献を果たしています。

G空間EXPO・国際自動車通信技術展でITSセンターの取り組みを紹介

2010年9月19~21日にパシフィコ横浜にて開催されましたG空間EXPOにおいて、ITSセンターとしてブースを出展し、取り組みとその成果を紹介しました。 会場には簡易型のドライビングシミュレータが体験できるコーナーも設けました。 開催期間中が連休だったこともあり家族連れが多く、幅広い年齢層に東大ITSセンターの取り組みを周知しました。

2010年12月1~3日には幕張メッセにて第2回国際自動車通信技術展が行われ、ITSセンターとして出展をいたしました。 来場者は専門家が多く、意見交換などが活発に行われました。

平城遷都1300年祭にてスマートツーリズム実験を実施

観光活性化のための映像処理技術と移動支援に取り組む池内研究室*では,2010年9月,平城遷都1300年記念祭において「最先端映像技術 MRでよみがえる平城宮」と題した実証実験デモを行いました。 現在は跡地となっている平城宮ですが,同研究室が開発を進めてきた技術により,ゴーグルや大型モニタを通じて,CGで復元した平城宮や官人,出来事などを現在の風景に重ね合わせて,往時の様子を体験することができるものです。

特に今回は,場内を走る新交通システム(トラム)にゴーグル型の表示システムを展開したことが特長です。 左右2カ所設置した全方位カメラの映像が客席の各端末に同時配信されるとともに往時の様子が重ね合わされ,乗客は移動しながらゴーグル越しに好きな方を見てタイムスリップを味わうことが出来ます。 多人数で体験できるため,観光バスなどへの適用が考えられます。

また,実験の様子の一部は,インターネット回線を通じて「ITSセミナー in 沖縄」の会場へ中継されました。

*主催:(社)平城遷都1300年記念事業協会,東京大学生産技術研究所,協力:奈良文化財研究所,奈良先端科学技術大学院大学横矢研究室,奈良女子大学城研究室,凸版印刷(株),(株)アスカラボ

ITSセミナー in 青森,沖縄,愛知,長崎

地域の協力のもと主催する「東大ITSセミナーシリーズ」が,2010年度は4カ所で開催され,前身センター時代から通算して13回を数えました。

同年7月には東北新幹線開通を目前に控えた青森,9月には離島特有の課題を抱えた沖縄で,また2011年1月には毎月の特別研究会の同時中継先である愛知,そして2月には鈴木客員准教授が赴任し,EV&ITSプロジェクトを推進する長崎で開催されました。

千葉実験所公開2010にてITSセンターの取り組みを紹介

2010年11月12日(金)に東京大学生産技術研究所千葉実験所公開が開催されました。 千葉実験所の一般公開は毎年この時期に行われ、実験所の広大な敷地を活かした研究や実験施設などを見学できることから、今回は前年を上回る約750名が訪れました。

ITSセンターでは専任メンバーの研究室の研究紹介や計測実験車両などを展示したほか、ITS実験用交通信号機において日本では珍しい青点滅表示(対向車側が赤信号表示であることを知らせて右折を即座に促す表示)のデモンストレーション、ジェットコースターの技術を応用した省エネ型都市交通システム「エコライド」の試験車両走行のデモンストレーションなどを行いました。

ITSシンポジウム2010 報告

2010年12月10、11日、第9回ITSシンポジウムが京都大学吉田キャンパスにて開催されました。 「歴史と伝統の街・京都から考えるITS」をテーマとした今回は論文数が過去最大の109件、参加者数330名となり、ITS関連の最新情報・技術に関する幅広い討論が行われました。

シンポジウムは大きく企画セッションと対話セッションに分けられ、企画セッションでは須田センター長がモデレータを務めた「新エネルギー・省エネルギーに関わるITS」など4つのセッションでディスカッションが行われました。 対話セッションでは、当センターのコアメンバー研究室より31件、学内連携メンバー研究室より3件の発表を行い、池内研究室の小野氏らによる「車載カメラ映像の時空間マッチングを利用した自車位置推定」がベストポスター賞学術部門を、同博士課程の韓氏らによる「視知覚情報にもとづく道路シークエンスデザインによる走行制御効果の検証」が同賞技術部門を受賞しました。

2011年のITSシンポジウムは東京大学で開催される予定です。

2010年度「社会人のためのITS専門講座」を開催

ITSセンターの主催で2010年度「社会人のためのITS専門講座」を2011年2月1日(火)に駒場リサーチキャンパスの生産技術研究所において開催しました。 本講座は前身の旧先進モビリティ連携研究センター及び本学旧国際・産学共同研究センターで2003年度から進められてきた産学官連携プロジェクト「サステイナブルITSプロジェクト」における成果を広く展開することと、ITSの技術開発及び事業化と地域展開に必要な人材を育成することを目的に、主に企業の技術者、地方自治体の担当者や政策立案者、大学の研究者などを対象に毎年開催しています。 本学の研究センターとして昇格した後も研究成果の展開と人材育成をITS分野における社会貢献と考え、今年度も開催の運びとなりました。 今回はITSセンターの研究成果の報告と近年関心が高まっている電気自動車に関する講演を中心に構成し、昼休みの時間帯を利用して研究室見学も行いました。

柏ITSセミナー ~便利で快適な移動がはじまるよ~ 開催される

平成23年2月4日、行政機関や大学、民間企業、NPO等48団体が参加している「柏ITS推進協議会」において、「柏ITSセミナー~便利で快適な移動がはじまるよ~」が開催され、151名の参加者を集め、1年間の研究成果と今後の方針を披露しました。

千葉県柏市は、平成21年に社会還元加速プロジェクト「情報通信技術を用いた安全で効率的な道路交通システムの実現」で、青森市、横浜市、豊田市とともに「ITS実証実験モデル都市」に選ばれました。 平成25年度末までの期間で、地域ごとの課題解決に向けた様々な実験に取組んでいます。 同市は都心から約30kmに位置するベッドタウンで、国道6号と16号が中心部で交差する交通の要衝です。 中心市街地は商圏人口230万人を持つが慢性的な交通渋滞が課題となっているほか、全世帯の約85%が単身世帯か核家族世帯であり全国平均よりも早いスピードで少子高齢化が進んでいるなど、新たな問題を抱えています。 このような課題解決に向け、柏の葉地域において、ICT等を活用し、自動車交通・公共交通機関・パーソナルモビリティが相互に連携・補完する“モーダルミックス"、CO2排出量や消費エネルギーの削減等を目指す“サスティナブルな交通移動"を実現するための取組“、次世代モビリティ"の可能性の検討・検証を行うことで、環境に配慮した次世代型環境都市の実現を目指します。

長崎EV&ITSプロジェクト最新状況

長崎・五島列島に100台余りのEV・PHVを導入し、観光ITSによる未来型ドライブ観光モデル構築に取り組んでいる本プロジェクトでは、昨年2月の導入以来、1年足らずの間に累積約6千台のレンタカー貸出と約1万3千人の体験人数という実績を積み、貴重な走行データの蓄積と同時に、EVの力強い走りに95%以上が「また乗りたい」「購入したい」と回答するなど、EV社会の到来は思っているよりずっと近いと実感しています。

一方で、充電環境の充実とその情報提供が最大の課題ですが、そのため本プロジェクトでは、複数の車メーカの同意も得ながら、電池残量などCANからの車両情報をITS車載器へ提供する枠組を整理するなど、EVを支えるエネルギーと情報のネットワークの標準化に一歩前進したところです。

現在、そうした標準化案に基づくEVやITS車載器、および充電器やITSスポット等の整備拡充のほか、地域での充電環境、観光情報を集約する地域データセンター「長崎県統合観光情報プラットフォーム」の整備を進めており、2011年夏にはさらに進んだ未来型ドライブ観光サービスが開始される予定です。

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