ニュースレポート2005

先進モビリティ連携研究センター(ITSセンター)の設立

2005年3月に東京大学生産技術研究所において、「先進モビリティ連携研究センター(通称:ITSセンター)」が設立されました。 これは、これまでの本サステナブルITSプロジェクトをはじめとして我々が行ってきた活動が、組織として認められたものであり、学におけるITSの研究開発センターとして、しかも分野横断的に産官学連携を体現する組織としては、国内初にして唯一のものと自負するところにあります。

ITSの技術開発は、1990年代より研究開発が開始され、10年間の黎明期を経て、セカンドステージに入ったと言われております。 このITSセカンドステージでは、ITSの要素技術の開発のみならず、それらの上に載る融合的横断的サービス面の研究開発が、緊急課題です。 分野融合・横断的なサービスを考え、ビジネスの芽を育てるためには、産・官・学が知恵を絞りあい、交通工学、電子情報工学、制御工学などの先端技術を融合しあう場が必要です。 これまでの既成の概念を取り払い、全く新しいサービスの方向性を検討するためには、若い柔軟な発想をする研究者、あるいは次世代の若い研究者予備軍を多数要する学の活躍が今後のITSの発展にとって必須であるといっても過言ではありません。

これまでの学は、ともすれば従来のディシプリン型の縦割り的な運営を行うため、こうした既存の学の研究体制においてはITSは推進が難しい分野の1つでした。 このITS研究における「学の壁」を打破するため、このたび本連携研究センターを発足させ、積極的に分野融合を行い、産官学の論者を招いて強力にITSビジネスの芽を育ててゆくこととしました。 本センターは、交通工学を専門とする桑原研究室、情報工学を専門とする池内研究室、車両制御工学を専門とする須田研究室、システム制御工学を専門とする鈴木研究室、そしてITSに造詣の深い田中客員教授、海外における協力者としてEdward Change客員教授をコアメンバーとして、産官学の論者を招いて強力にITSビジネスの芽を育ててゆくこととしました。 さらに、これらコアメンバーのほかにも広く学内外に協力を求め、学内においては、通信系の瀬崎助教授、画像系の上條助教授・佐藤助教授、環境系の加藤教授、大岡助教授、空間系の柴崎教授を、学外においては通信プラットフォームなどが専門の長谷川助教授(埼玉大)、車両制御を専門とする景山教授(日大)、交通工学が専門の大口准教授(首都大)、赤羽教授(千葉工大)をサポートメンバーとして迎え、ITSに関わる全ての分野を、しかも産官学民の区別なく融合する拠点として活動を行っていくことを使命としています。

また、2005年10月にEdward Chung客員教授が赴任しているスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)と研究交流協定を皮切りに、11月には米国カリフォルニア州PATHプロジェクトと、来年2月には韓国ソウル市立大学との協定締結が予定されているなど、国際連携においても積極的な活動を既にいっており、今後こうした国際的コラボレーションを通じてITSの世界標準を検討していくことも計画に入れています。

先進モビリティ連携研究センター(ITSセンター)設立記念シンポジウム

本センターの設立を学内外に広くアピールすることを目的として、10月27日に先進モビリティ連携研究センター設立記念シンポジウムを開催しました。

シンポジウムでは、生産技術研究所の前田正史所長の挨拶に続き、トヨタ自動車株式会社の渡邉浩之技監により「持続可能なモビリティ社会の実現 ~ITSへの期待~」というテーマでの基調講演が行われました。 続いて本センターと研究交流協定を締結したスイス連邦工科大ローザンヌ校 (EPFL) の A.G. Dumont 教授、E. Chung 客員教授からヨーロッパおよびスイスにおけるITSの現状と展望についての招待講演が行われました。 午後はITSセンターの各プロジェクトの研究紹介に続き、ITSに関わる民間企業から5名のパネリストを迎えてのパネルディスカッションが行われ、ITSにおける産学連携のあり方について活発な討論が行われました。

シンポジウムには民間企業・財団・大学などから合わせて113名の参加者が来場し、終了後の懇親会では参加者同士が業種や分野を超えて熱心に意見交換をする光景が見られました。

(田中伸治 助手)

池内克史 センター長・教授
池内克史 センター長・教授
渡邉浩之 トヨタ自動車技監
渡邉浩之 トヨタ自動車技監

社会人のためのITS専門講座

社会人のためのITS専門講座が10月28日、国際・産学共同研究センター(CCR)と(財)生産技術研究奨励会の主催、ITSセンターの協力により駒場コンベンションホールで開催されました。 参加者は企業人、自治体関係者、学生など78名でした。

東京大学国際・産学共同研究センターでは、2003年度より「サスティナブルITS」において産学連携によるITS事業化の研究としくみ作りを行っていますが、この成果を多くの企業、自治体の担当者に広く展開するとともに、参加メンバーを中心とした専門講座を開設し、企業技術者、地方自治体担当者、政策立案者等を対象に、企業や自治体では育成し難いこの分野の専門人材育成を図り、幅広く社会貢献することがCCRとしての重要な役割である考えており、昨年度に引き続き開催しました。 この活動に対しては本年度からITSセンターが全面的に協力することになりました。

講座は池内克史ITSセンター長の開講挨拶に始まり、 須田研究室の高橋良至特任助手による「ユニバーサルドライビングシミュレータを用いたITSバーチャルプルービンググラウンド」、 桑原研究室の田中伸治助手による「交通マネジメントにおけるITS技術の活用」、 池内研究室の影澤政隆助手による「ITSにおけるセンシング技術―画像とレーザを中心に―」 鈴木高宏助教授による「交通システムにおけるダイナミクスの解析と制御」 の講義がありました。 その後は4研究室の見学会があり本年度の専門講座を終了しました。

(田中敏久 客員教授)

社会人のためのITS専門講座

第12回ITS世界会議サンフランシスコ2005 報告

11月6日から10日まで、第12回ITS世界会議がサンフランシスコのモスコーニセンター他で開催されました。 この国際会議はITSに関するプロジェクトの国際的な協調・交流の場として、また最新の研究発表の場として毎年開催されているものです。 今回は “Enabling Choices in Transportation”(移動手段の選択)をテーマにして研究発表と展示が行われ、当センターのサスティナブルITSプロジェクトからも、昨年の名古屋大会に引き続き、テクニカルセッションにおいて4編の論文発表を行いました。

第4回ITSシンポジウム2005

12月1日、2日の2日間に渡り、ITS Japan の主催、ITSセンターの共催により、第4回ITSシンポジウム2005が東京大学生産技術研究所コンベンションホールにて開催されました。

実行委員長である東京大学国際・産学共同研究センターの桑原教授による挨拶から始まり、 論文セッション「1. 事故・安全」「2. アーキテクチャ・プローブ」「3. 交通管制・交通計画」「4. 地図技術」、 オーガナイズドセッション「1. 安全」「2. プローブ」、 招待講演「環境」 をテーマにした発表が行われ、またポスターセッションでは45件のITS全般に及ぶ様々な内容の研究が発表されました。 各セッションでは発表者と会場参加者との間で闊達な議論が繰り広げられました。 最後に、プログラム委員長である埼玉大学の長谷川助教授による挨拶が行われ、シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じました。 参加者は産官学のITSに携わる研究者を中心に235名にのぼりました。

サステイナブルITSプロジェクトからは論文セッション3件、ポスターセッション2件の発表を行いました。 論文セッションではサステイナブルITSの基盤システムである複合現実感交通実験スペースの開発要素であるドライビングシミュレータ、ミクロ交通シミュレータ “KAKUMO” のドライバモデル、運転映像生成技術の発表を行いました。 ポスターセッションでは応用研究として路上駐車帯設置効果の評価、経路選択モデルの発表を行いました。

(田中伸治 助手)

第4回ITSシンポジウム2005
第4回ITSシンポジウム2005
第4回ITSシンポジウム2005