研究活動
安全・持続可能な交通社会の実現に向けた「協調ITS」の提言
概要
初期(1990年代以前)のITSは、主に自動車社会の中で、例えば「情報通信技術を活用して、道路交通の安全、円滑、環境、快適などに関る諸問題を解決する取り組みやシステム」と定義されてきたと言えるでしょう。 その後、情報通信技術の進化・一般化や、特定の手段・対象に限らない移動を考える必要性など、時代背景が大きく変化したことを鑑みると、今日ではITSを以下のように再定義できると考えられます。
- 相互に通信で密に情報が共有された環境下における移動の安全・安心・円滑を確保・向上させるために、技術、社会・経済制度全般を対象としたイノベーション
- 一定の制約のもと、あらゆる状況下で様々なヒト・モノ・移動体・インフラ等に関する情報が集約、共有、活用され、相互に「協調」したシステム
当センターでは、この新たに再定義したITSを特に「協調ITS」と称し、全体像を描くとともに、将来、移動体の性能・機能が大きく変わることを見越しながら、移動空間などのインフラが備えるべき機能・性能や、計画・設計論、運用技術や社会規範・制度などについて「学」の立場から提言書として取りまとめました。
提言書では、背景の概説に続いて、まず今後のITSに求められる評価軸とターゲットを整理するとともに、分野横断的に考慮すべき事項についても検討、整理しています。また、自動運転をはじめとした具体例を取り上げ、技術要素や実現イメージなどの検討を通じて、中長期に渡ってITSを推進していく上での課題を検討、整理しています。
今後、ITSに関連する研究機関・民間・行政など様々な立場の人が共通的な視点で研究開発、実用化、導入を行えるように、また今後のITSの方向性や全体像を検討していく上で考慮すべき事項や課題を共有できる指針として、この提言書が活用されることを期待しています。
2016年10月
東京大学生産技術研究所 次世代モビリティ研究センター
提言書・資料のダウンロード

生産研究 vol. 68, no. 6,
pp. 461-469, 2016.11

ITSセミナー in 東京
2016.10